認知症の親が入院した。退院後の生活をどう決めるか
認知症の親が入院したら、退院までに「行き先」「認知症を診てもらう先」「介護保険の手続き」の 3 つを同時に進める。前橋市の退院調整ルールでは、認知症状があること自体が退院調整の対象になる。
入院してから会話がかみ合わなくなった、夜に落ち着かないと病棟から言われた。家で見られるのか答えが出ないまま、退院の話だけが進んでいきます。決めることは多く見えますが、順番をつければ 3 つに分けられます。
今やること 3 つ
認知症の親が入院したとき、退院までに決める 3 つ
| 決めること | 誰と決めるか | 家族が用意するもの |
|---|---|---|
| 退院後の行き先 (自宅・老健・グループホームなど) | 病院の退院支援担当、ケアマネジャー | 家族が介助に入れる曜日と時間帯のメモ |
| 認知症を診てもらう先 | 主治医、認知症疾患医療センター | 入院前と入院中で変わった様子の記録 |
| 介護保険の手続き | 病院の退院支援担当、市の介護保険課 | 介護保険被保険者証、担当ケアマネジャーの名刺 (いる場合) |
- 症状の見立てと治療の方針は主治医に確認する内容で、家族だけで結論を出すものではありません
- 行き先は 1 つに絞らず、自宅に戻る案と施設を使う案を並べて相談します
- 3 つは同時に進めます。1 つの結果を待ってから次に移ると、退院日までに調整が終わらないことがあります
病院の中で最初に声をかける相手
- 相談の窓口は医療ソーシャルワーカー (MSW) — 病院の地域連携室や相談室にいる、社会福祉の立場から患者と家族を支える職種です
- 退院後の生活の課題は MSW の業務範囲 — 厚生労働省の業務指針は、入退院による療養環境の変化や居宅での療養生活に伴う「心理的・社会的・経済的課題を予測し、その発生を予防するとともに、早期の対応を行うこと」を業務に挙げています 出典: 厚生労働省「医療ソーシャルワーカー業務指針の全部改正について」
- 本人の意思決定の支援も業務に含まれる — 同じ指針は「意思決定支援」を業務の 1 番目に置き、医療・ケアチームの一員として調整と支援を行うとしています 出典: 厚生労働省「医療ソーシャルワーカー業務指針の全部改正について」
- 指針の日付 — この指針は令和8年3月13日付の通知 (医政発0313第4号) で全部改正されました 出典: 厚生労働省「医療ソーシャルワーカー業務指針の全部改正について」
前橋市の病院では、退院調整はこう進む
前橋市には、病院とケアマネジャーが入院時から情報を共有する「前橋版 退院調整ルール」があります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 運用開始 | 平成29年2月 |
| 想定しているケース | 前橋市内に住む人が市内の病院に入院し、退院後に在宅へ戻る場合 |
| 入院前に担当ケアマネジャーがいる人 | 要介護・要支援に関わらず、すべて対象 |
| 入院前に担当ケアマネジャーがいない人 | 病院が基準に照らして退院調整が必要と判断した人が対象 |
| 調整に必要な期間の目安 | 退院の 7 日前 + α |
| ルールの性格 | 強制的な効力を持たない。日数は目安 |
出典: 前橋市「【前橋版】退院調整ルールの手引き (令和8年6月改訂版)」
担当のケアマネジャーがいない 65 歳以上の患者について、病院が「退院調整が必要」と判断する基準は次の 4 項目です。1 項目でも当てはまれば、病院から居宅介護支援事業所へ連絡する流れになります。
| 基準 | 連絡先 |
|---|---|
| 立ち上がりや歩行などに介助が必要 | 居宅介護支援事業所 |
| 食事に介助が必要 | 居宅介護支援事業所 |
| 排泄に介助が必要 | 居宅介護支援事業所 |
| 精神症状又は認知症状がある | 居宅介護支援事業所 |
| 判断に迷った場合 | 患者の住所地の地域包括支援センター |
出典: 前橋市「【前橋版】退院調整ルールの手引き (令和8年6月改訂版)」
- 認知症状は、それだけで退院調整の対象になる項目です。 歩ける・食べられるという理由で「調整は不要」とはなりません
- 介護保険の申請も病院が支援する — 手引きは、病院担当者が患者や家族に介護保険の説明を行い申請等を支援すること、ケアマネジャーによる代行申請も可能であることを示しています
- 実際の進め方は病院ごとに違う — 手引きは日数を目安としており、詳細な実施方法は各病院の指示に基づくとしています。全体像は 前橋版 退院調整ルール を参照してください
退院までの 6 段階
認定の効力は申請日にさかのぼります (介護保険法第27条第8項) 出典: 厚生労働省 法令等データベース 介護保険法。待っている間の動き方は 要介護認定の申請中にできること・できないこと にまとめています。
退院後の行き先を、誰がどう決めるのか
- 決めるのは本人。家族は支える側 — 厚生労働省のガイドライン (平成30年6月) は「認知症の症状にかかわらず、本人には意思があり、意思決定能力を有するということを前提にして、意思決定支援をする」としています
- 住まいを移すことは、支援の対象になる意思決定 — 同ガイドラインは、自宅からグループホームや施設等に住まいの場を移す場合を、社会生活の意思決定支援の例に挙げています
- 家族は支援チームの一員 — 同居しているかどうかを問わず、本人をよく知る家族がチームの一員となることが望ましいとされています
- 本人と家族の意思が対立することも想定されている — その場合は専門職や行政職員が、家族の悩みや対立の理由を確認したうえで、使える社会資源を検討するとされています
- 話し合いには本人の参加が望ましい — ただし、知らない大勢に囲まれると意見を出せなくなる場合があることへの配慮も求められています
出典: 厚生労働省「認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン」
行き先の選択肢を同じ軸で並べる
| 行き先 | 利用できる人 | 役割 |
|---|---|---|
| 自宅 (介護保険の居宅サービスを使う) | 要支援1・2、要介護1〜5の認定を受けた人 | 介護サービス計画 (ケアプラン) を作成してサービスを受ける |
| 介護老人保健施設 (老健) | 要介護1〜5。要支援1・2の人は利用できない | 在宅復帰を目指す人に、リハビリテーションや必要な医療、介護を提供する |
| グループホーム | 認知症のある要支援2〜要介護5。要支援1の人は利用できない | 1 つの共同生活住居に 5〜9 人が、介護スタッフとともに共同生活を送る |
| 特別養護老人ホーム | 原則として要介護3以上。新たに入所する要介護1・2の人は、やむを得ない理由がある場合以外は利用できない | 常に介護が必要な人の入所を受け入れる |
-
自宅で介護保険のサービスを使う場合について 出典: 前橋市「介護サービス計画の作成」
-
グループホームについて 出典: 厚生労働省 介護サービス情報公表システム「認知症対応型共同生活介護 (グループホーム)」
-
特別養護老人ホームについて 出典: 厚生労働省 介護サービス情報公表システム「介護老人福祉施設 (特別養護老人ホーム)」
-
老健は、自宅に戻れるかを定期的に検討する施設 — 厚生労働省の通知は、この検討を「少なくとも三月ごとには行うこと」としています 出典: 厚生労働省「介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準について」
-
3 か月で退所になるという意味ではありません — 検討の結果をどう受け止めるかは、施設の支援相談員とケアマネジャーに相談してください
-
前橋市は空き情報を公開している — 市内の特別養護老人ホーム・老健・グループホームの待機者と空き情報を、施設からの情報提供に基づいて公開しています 出典: 前橋市「介護保険施設等の待機者/空き情報」
-
掲載は更新日時点の情報 — 最新の状況と入所手続きは各施設に問い合わせる形です
種類ごとの違いは 介護施設5種類の違いと入居の条件 を参照してください。
退院前に、認知症を診てもらう先を決めておく
群馬県は県内 13 医療機関を認知症疾患医療センターに指定しており、前橋市内には 3 か所あります。
| 医療機関 | 類型 | 電話 | 相談窓口 |
|---|---|---|---|
| 群馬大学医学部附属病院 | 中核型 | 027-220-8047 | 月曜日〜金曜日 9時00分〜17時00分 |
| 上毛病院 | 地域拠点型 | 027-266-1814 | 月曜日〜土曜日 (祝祭日を除く) 9時00分〜17時00分 |
| 老年病研究所附属病院 | 地域拠点型 | 027-252-7811 | 月曜日〜金曜日 8時30分〜17時00分 |
- センターの役割 — 専門の相談員による医療相談、鑑別診断、行動・心理症状 (幻覚、妄想、徘徊等) への対応の 3 つが挙げられています
- 受診の要否と時期は主治医に確認する — 入院中の病院から紹介状を書いてもらえるかを、退院が決まる前に尋ねておきます
- 自宅に戻ったあとの訪問支援 — 前橋市は平成25年8月から認知症初期集中支援チームを置いています。チーム員が家庭を訪問し、おおむね 6 か月を目安に支援します。相談先は地域包括支援センターです 出典: 前橋市「認知症初期集中支援チーム」
- 電話で相談したいとき — 厚生労働省は主な相談先として、公益社団法人 認知症の人と家族の会の電話相談 (0120-294-456、月曜日〜金曜日 10時00分〜15時00分、祝日を除く) を挙げています 出典: 厚生労働省「認知症に関する相談先」
市内の相談先と段階ごとのサービスは、前橋市 認知症ケアパス に一覧があります。
よくある質問
Q. 入院してから認知症が進んだように見えます。元に戻りますか。 A. 編集部では判断できません。入院前の様子と入院後に変わった点を日付つきで書き出し、主治医に見せて尋ねてください。退院後の受診先も同じ場で相談できます。
Q. 本人は「家に帰る」と言いますが、家族は自信がありません。 A. 厚生労働省のガイドラインは、本人と家族の意思が対立する場合があることを前提に、専門職が使える社会資源を検討するとしています。家族の事情を隠さず、病院の MSW かケアマネジャーに伝えてください。
Q. 担当のケアマネジャーがいません。誰が探してくれますか。 A. 前橋市の退院調整ルールでは、病院の担当者が事業所の選定を支援します。要支援の見込みや判断に迷う場合の連絡先は、本人の住所地の地域包括支援センターです。
Q. 要介護認定は入院中に申請できますか。 A. 申請はできますが、前橋市は入院したばかりで調査ができない場合に申請の取下げを求めることがあるとしています。申請の時期は病院の担当者と相談してください。
Q. 市外の病院に入院しています。前橋市のルールは使えますか。 A. 前橋版 退院調整ルールは、市内在住の人が市内の病院に入院した場合を基本に想定しています。市外の病院では、その病院の相談室と本人の住所地の地域包括支援センターに相談してください。
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- 介護老人保健施設 (老健)
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- 前橋市の相談先
- あなたの状況を診断する
出典
- 厚生労働省「医療ソーシャルワーカー業務指針の全部改正について」医政発0313第4号 令和8年3月13日 (2026年9月28日閲覧) https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001673455.pdf
- 厚生労働省「認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン」平成30年6月 (2026年9月28日閲覧) https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000212396.pdf
- 厚生労働省「介護保険法」法令等データベース (2026年9月28日閲覧) https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=82998034&dataType=0&pageNo=1
- 厚生労働省「介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準について」老企第44号 (2026年9月28日閲覧) https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta4388&dataType=1&pageNo=1
- 厚生労働省 介護サービス情報公表システム「介護老人保健施設 (老健)」(2026年9月28日閲覧) https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/publish/group15.html
- 厚生労働省 介護サービス情報公表システム「認知症対応型共同生活介護 (グループホーム)」(2026年9月28日閲覧) https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/publish/group18.html
- 厚生労働省 介護サービス情報公表システム「介護老人福祉施設 (特別養護老人ホーム)」(2026年9月28日閲覧) https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/publish/group14.html
- 厚生労働省「認知症に関する相談先」(2026年9月28日閲覧) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000076236_00003.html
- 群馬県「認知症疾患医療センター」(2026年9月28日閲覧) https://www.pref.gunma.jp/page/2132.html
- 前橋市「【前橋版】退院調整ルールの手引き (令和8年6月改訂版)」(2026年9月28日閲覧) https://www.city.maebashi.gunma.jp/material/files/group/37/taiintyouseiru-ru20260605.pdf
- 前橋市「要介護認定・要支援認定の申請」(2026年9月28日閲覧) https://www.city.maebashi.gunma.jp/soshiki/fukushibu/kaigohoken/shinseisho/11113/7613.html
- 前橋市「介護サービス計画の作成」(2026年9月28日閲覧) https://www.city.maebashi.gunma.jp/kenko_fukushi/2/4/3/11731.html
- 前橋市「介護保険施設等の待機者/空き情報」(2026年9月28日閲覧) https://www.city.maebashi.gunma.jp/kenko_fukushi/2/7/11807.html
- 前橋市「認知症初期集中支援チーム」(2026年9月28日閲覧) https://www.city.maebashi.gunma.jp/kenko_fukushi/2/9/15631.html
よくある質問
- Q.入院してから認知症が進んだように見えます。元に戻りますか。
- 編集部では判断できません。入院前の様子と入院後に変わった点を日付つきで書き出し、主治医に見せて尋ねてください。退院後の受診先も同じ場で相談できます。
- Q.本人は「家に帰る」と言いますが、家族は自信がありません。
- 厚生労働省のガイドラインは、本人と家族の意思が対立する場合があることを前提に、専門職が使える社会資源を検討するとしています。家族の事情を隠さず、病院の MSW かケアマネジャーに伝えてください。
- Q.担当のケアマネジャーがいません。誰が探してくれますか。
- 前橋市の退院調整ルールでは、病院の担当者が事業所の選定を支援します。要支援の見込みや判断に迷う場合の連絡先は、本人の住所地の地域包括支援センターです。
- Q.要介護認定は入院中に申請できますか。
- 申請はできますが、前橋市は入院したばかりで調査ができない場合に申請の取下げを求めることがあるとしています。申請の時期は病院の担当者と相談してください。
- Q.市外の病院に入院しています。前橋市のルールは使えますか。
- 前橋版 退院調整ルールは、市内在住の人が市内の病院に入院した場合を基本に想定しています。市外の病院では、その病院の相談室と本人の住所地の地域包括支援センターに相談してください。
出典
数字・要件は以下の一次情報で確認しています。最新の内容は各公式ページでご確認ください。
- 医療ソーシャルワーカー業務指針の全部改正について (医政発0313第4号 令和8年3月13日)
- 認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン (厚生労働省 平成30年6月)
- 介護保険法 (厚生労働省 法令等データベース)
- 介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準について (老企第44号)
- どんなサービスがあるの? 介護老人保健施設 (老健)
- どんなサービスがあるの? 認知症対応型共同生活介護 (グループホーム)
- どんなサービスがあるの? 介護老人福祉施設 (特別養護老人ホーム)
- 認知症に関する相談先 (厚生労働省)
- 認知症疾患医療センター (群馬県)
- 【前橋版】退院調整ルールの手引き 本体PDF (令和8年6月改訂版)
- 要介護認定・要支援認定の申請 (前橋市)
- 介護サービス計画の作成 (前橋市)
- 介護保険施設等の待機者/空き情報 (前橋市)
- 認知症初期集中支援チーム (前橋市)